まさかの不意打ち。

ここでそんなこと言われるなんて考えてなかったから、思いっきり赤面してしまった。


だけど、恥ずかしくて小さくなるわたしを、瑠衣は許してくれない。


「もう一回聞かせて。まだ夢みたいで信じられへんねん」

「やだ、むり」

「なんで? 俺は、何回でも言えるよ」


好きやで、と耳のそばで言われ、ぞくっとした。


そして瑠衣はわたしの首元に顔をうずめ、子供が親に甘えるように抱きついてきた。


夢の中にいる気がするのは、わたしの方だ。

足元がふわふわして、今にも倒れてしまいそう。


瑠衣の服をぎゅっとつかんで、ようやく小さな声で言った。


「……好き」


どうしてこんなに恥ずかしくなるんだろう。

まるで初めての恋みたいに、彼の言葉ひとつひとつにペースを乱される。


「ありがと、先生」


チュッ、とおでこにキスされた。


「先生のおかげで、めっちゃ元気になった。親と話し合うパワーも出たわ」


そう言って急に、子供の顔に戻る瑠衣。

さっきまであんなにわたしをドキドキさせてたくせに。



無邪気に手を振りながら、瑠衣は帰っていった。