その夜はマンションに瑠衣を泊まらせた。

もちろん少し躊躇したけど、あの状態で目を離すことの方がよっぽど心配だった。


翌朝起きてリビングに行くと、瑠衣はまだソファで眠っていた。


「……おはよ」


寝顔に向かってつぶやいてみる。

すると、閉じたまぶたがピクンと反応した。


「……んー」

「起きた?」


パチパチとまばたきしながら瑠衣の目が開き、そして


「――うあぁっ!」


わたしの顔を見るなり、奇声を発して飛び起きた。

まるで化け物でも見たような反応だ。


「え、先生、なんで?」

「だってここ、わたしの部屋やもん」

「あ……」


寝ぼけた頭でやっと理解したらしい。


「そっか、俺、家を飛び出して……」