腕の間から、うめくような泣き声がもれた。

もっと力をこめて抱くと、瑠衣は一瞬息を止め、堰をきったように号泣しはじめた。


「片瀬くん……」


わたしの声も、彼と同じように震えていた。


「大丈夫。大丈夫やから」


何度も、彼にそう言った。


大丈夫、だからお願い、泣かないで、と。 


きれいな瑠衣。

まっすぐな瑠衣。

幸せを疑うことなく生きてきた瑠衣。


あなただけは、大人たちのせいで傷ついてほしくないよ。



「先生――…?」


瑠衣の声を、すぐそばで聞いた。



気づけば彼の唇に、自分のそれを重ねていた。



「――…」


そっと唇を離す。


目の前には、驚きで表情を失った瑠衣の顔。

開いた瞳の中央にわたしが映っていた。