頬が、濡れていた。

わたしの知っている瑠衣じゃない、哀しい顔だった。


「家に帰ったんじゃなかったの?」


その言葉を聞いた瑠衣の唇が、わずかに震えた。


「帰ったよ」

「じゃあなんで……」

「うん。なんでやろう……ここに戻ってきてもーた」


うつむく瑠衣の長いまつげに雪が舞い落ちた。

それを払うこともせず、彼はぽつぽつと言葉を吐き出した。


「家に帰ったらめっちゃ豪華な料理が並んでて、父さんと母さんと、3人で食べた。
あんなん久しぶりやったから、すごい楽しかった……。
そしたらさ、父さんが俺に聞くねん。勉強はうまくいってるんか?って。
俺がうなずいたら、じゃあこれで安心やなって」


「安心?」



「――あいつら……離婚するらしい…っ」



大粒の涙が瑠衣の瞳からいっきにあふれ出し、まつげについた雪を溶かした。