顔を空に向けると、白いものが次から次に落ちてくる。

だけどそれは肌に触れるか触れないかで溶けて、実体をなくす。

口を大きく開けるとほんの少しだけ舌がひんやりした。

なんだか子供に戻った気分だった。



突然、
無性に瑠衣が恋しくなった。



声が聞きたい。

さっきまで会っていたのに、

もっと会いたい。


わたしはポケットから携帯を取り出して、ボタンを押した。

つながった携帯のスピーカーから、いつものメロディーコールが流れ出す。


だけど、それだけじゃなかった。


「え――?」


メロディーコールと同時に、わたしの背後で鳴り響いた音楽。

それはスピーカー越しの小さな音ではなく、

はっきりと空気を震わせる着信音で――。



振り返ると、そこにいるはずない人がいた。



「片瀬くんっ……?」


マンションの駐輪場にうずくまり、瑠衣はそこにいた。

ポケットで光っているのは、今まさにわたしが鳴らした携帯だ。


「な、何してんの!?」


電話を切って駆け寄り、彼の顔を覗き込む。

そして、息をのんだ。


「どう…したん?」