部屋に戻ると、まっさきにカーテンを開けて道路を見下ろした。

駅の方へと帰っていく瑠衣の背中が見えて、やがて夜に消えた。


わたしは鞄をまさぐり、ハンカチに包んで持って帰ってきたマグカップを取り出した。


これからも、このカップを見るたびに、わたしは瑠衣と過ごしたクリスマスイブを思い出すんだろう。


そう思うと幸せなような、少し怖いような気もした。






テーブルに置いたマグカップを見ているうちに、いつの間にか眠っていたらしい。


起きると、時計は11時を越していた。

暖房をつけていたとはいえ、ソファで寝たから手足がひどく冷えている。


のそっと起き上がり開けっ放しのカーテンに手をかけた、そのとき、初めて気づいた。


「あ――」


寒いと思ったら、雪だった。


ひらひらと羽のような初雪が降り落ちて、夜の町並みに淡いベールがかかっている。


わたしは上着を羽織り、マンションの外に出てみた。