「ケチ~。自分だけずるいなあ」

「わたしは大人やからいいの。
すみません、グリューワインひとつください」


ブーブー文句を言う瑠衣を無視して、ひとり分のワインを注文した。


屋台のおじさんは、わたしたちの様子を微笑ましそうに見ながら、マグカップにワインを注いでくれた。


「これってもしかして、限定マグカップですか?」


わたしの質問にうなずくおじさん。


「はい。今日の思い出に、ぜひ持って帰ってください」


カップには“クリスマス・マーケット”のロゴと、可愛いサンタの絵が描かれていた。


「へぇー。いいやん」


瑠衣が興味しんしんで覗きこんでくる。


「俺にもちょっと見せて」

「うん」


マグカップを手渡すと、瑠衣はすばやい仕草でワインを一口飲みこんだ。


「あっ! こら!」

「先生、ひっかかった~」

「この不良高校生! 返してよ」