その日の夜は、少し離れた街のラブホテルに行った。

さびれた路地裏のホテルはどこも古びていて、気に入るような部屋がなかなか見つからなかった。


「なんで今日はいつもと違う所にしようって思ったん?」


部屋がカビ臭いことに不満をもらしながら、男はわたしの腰に腕をまわして訊いてきた。


「なんとなく、今日はちょっと気分を変えたかっただけ」


すると男はその答えが気に入ったらしく、“気分を変える”ために、普段はしないような行為をいろいろと試された。


彼――山崎は、同じ予備校で働く数学の講師だ。

生徒からの信頼はけっこう厚いけど、実は妻子ある身でわたしとヤるくらいだし、まあ、中身はそのていどの人間だ。


だけど愚かだということを、嫌悪の対象にはしたくない。


わたしは自分がひどく醜い人間だと自覚しているし、他人に対しても正当であることを求めない。