「いいもん買ってきました」


そう言って瑠衣がビニール袋から取り出したのは、

真っ赤なフェルト製の帽子と、綿でできたヒゲ。


あっけに取られるわたしをよそに、彼は手際よくそれらを身につけた。


「ほらっ。これで変装完了」


サンタクロースになった瑠衣が、自信満々に言う。


「……」

「あれ? 無反応?」

「……ぷっ」


わたしは思わず笑ってしまった。


「ちょっと、何それ! すごい変なんやけど!」

「笑うなよ~。失礼な」

「だって私服にそれはおかしいよ」
 

あ、たしかに。と瑠衣は自分の体を見下ろして言った。

その様子がおかしくて、わたしはますますお腹を抱えて笑う。


「……よかった。先生が元気になってくれて」

「へ?」

「俺が先生こと困らせてるのは分かってるけど、その分、俺がいっぱい笑わせたいねん」

「片瀬くん……」


もじゃもじゃのヒゲの下で、かすかに染まる瑠衣の頬。


ねえ。

こんなにもわたしを笑わせてくれる人、温かい気持ちをくれる人が、

あなたの他にいるわけないでしょう? 


「手……、つなごっか」


小さくつぶやいて差し出したわたしの右手を、

不恰好なサンタさんが、ぎゅっと握った。