夜の7時を過ぎてもまだ商店街は活気で満ちていて、ケーキ屋の売り子さんの声があたりに響いている。


プレゼントの袋を抱えた、急ぎ足のサラリーマン。

携帯で話しながら誰かを待っている女の子。

通り沿いのお店から、Whamの“ラスト・クリスマス”が流れていた。


「あっ、俺この曲めっちゃ好きなんすよ」


瑠衣ははしゃいでいるけれど、わたしは誰かに見つかるんじゃないかと、気が気じゃない。


「……そんなに心配?」


立ち止まり、瑠衣は残念そうな顔でわたしを見下ろした。


「うん、そりゃあ、まあね」


我ながら、嫌な言い方をしてしまった。

自分の立場のことしか考えていないのが、バレバレだ。


気まずくてうつむいたら、瑠衣は何も言わずに突然わたしのそばから離れた。


向けられた背中に、反射的に胸が痛んだ。


瑠衣、怒った――? 


不安になって顔を上げると、なぜか100円ショップに入っていく彼が見えた。


「え?」


呆然とするわたし。

どうして100円ショップなわけ?


すると何かの入った袋を手に、瑠衣が出てきた。


そして、とびっきりの笑顔。