「何してんの? クリスマス会は……」

「俺は不参加なんです」

「なんで?」

「今日は家でパーティーするから、早く帰ってくるように、って母さんが」

「あ……そうなんや」


瑠衣の返事を聞いて、少なからずガッカリしている自分に気づいた。

こら、わたしは一瞬、何を期待したんだ?


「家族でクリスマスを祝うなんて、片瀬くんちは仲いいんやね」


落胆を悟られないよう、なるべく明るい声でわたしは言った。


「いや、こんなの何年ぶりかですよ。いつも親父の帰りが遅いし。
今年はどういう風の吹きましか知らんけど、早めに仕事切り上げるって言い出したんです」


「それじゃあ、息子が帰らないわけにはいかんよね」

「そうっすね」


何だかんだ言って、瑠衣は嬉しそうだ。

いそいそと定期入れを取り出して、改札を通り抜けた。




電車の中はいつもよりカップルの姿が目立つ。

人前で手を握り合う姿も、ひそひそと耳打ちするような会話も、
今日という日だけは誰も文句は言わない。

 
みんな、幸せそうだな。

これからどこに行くんだろう。

食事して、夜景を見て……? 

わたしには関係のない話だけど。


瑠衣と一緒に電車に乗っているのに、わたしはほとんどしゃべらず窓の外を眺めていた。