「無理かどうかなんて分からへんやん。
せっかくのクリスマスなんやから、勇気出してみたらいいのに」

「実は……ダメもとで、伝えるだけ伝えてみようかと思ってるんです」

「ほんとに?」

「今日はあいつらとカラオケがあるから、明日、電話で告白してみようかなあって」


涼子ちゃんの声が、どんどん小さくなっていく。

本当に恋する乙女の顔で、こんな一面があるなんて初めて知った。


「頑張ってね」


わたしは心からそう言った。







「じゃあ、俺らはここなんで」

大きなサンタの人形が立つカラオケ屋の前で、生徒たちは足を止めた。


「あんまり遅くなりすぎないようにね」

「はーい」


自動ドアの向こうに消えていく彼らに手を振り、わたしは駅の方へと歩き出した。


――が、同じ方向に歩き出した足音が、私の他にもうひとつ。


「え、片瀬くん!?」


カラオケに行ったと思っていた瑠衣が、すぐ後ろにいた。