「あーっ! あのケーキうまそう!」


話の流れをぶった切るような大声が響いた。

近くのケーキ屋を指差した、瑠衣の声だ。


「あ~ホンマや、うまそう~」

「食いたいなあ」


男子たちの興味が、ずらりと並んだクリスマスケーキに向けられる。

さっきまでの話題は、すでにどこかに飛んでいた。


瑠衣、

きっと助けてくれたんだ……。


「あいつらはまだまだ、色気より食い気ですね」


ただひとりケーキに釣られなかった涼子ちゃんが、あきれた顔で言った。


「涼子ちゃんは、デートとかしないの?」

「そんな相手がいたら、クリスマスにあいつらなんかと一緒にいませんよ」

「あははっ」


相変わらずサバサバとした、彼女の物言いが気持ちいい。


「でも涼子ちゃんも、好きな子くらいはいるやろ?」

「え……それは」


急に彼女の表情が変わった。

少し赤らんだ頬がふんわりと持ち上がって、いっきに女の子らしい顔。


「その反応は、やっぱりいてるんや? 告白せーへんの?」

「そんなっ、無理ですよ」


今度は目をまん丸にして、口をパクパクさせた。


なんだか、可愛い。

応援したくなってしまう。