「あれ~? お前ら、何やってんの?」
のん気な声が近づいてきて、栗島くんたちは振り返る。
「おお、瑠衣」
「今な、ちょうど瑠衣の話しててん」
「はあ? どうせ悪口やろ~」
ブレザーのポケットに両手をつっこんだまま、瑠衣は肩をすくめて笑う。
そしてわたしの方に視線を落とすと、
「先生、こんばんは」
と、ほんの少しだけお行儀のいい声で挨拶した。
「こんばんは、片瀬くん。こないだはどうもありがとうね」
「はい?」
「黒板」
「あ。ああ~」
よくわからない間の抜けた返事をして、瑠衣はさっきのように肩をすくめた。
癖なのだろうか。
その仕草はなんだか照れ隠しのようにも見えて、彼の持つ純朴さを引き立てる。
「じゃあ、わたしはそろそろ次の授業行くね」
「あっ、先生」
去り際に呼び止められ、わたしは足を止めた。