「ねー聞いてー、あの子ぉ、あいつに告られてた」
「まぁじぃー?やっば」
…なんだよ、それ。
お前らは人の事考えらんないの?
逆の立場になって考えろ、ばーか。
おっと、嘘嘘。う・ま・し・か
「なにみてんの?紫乃さん」
私の上から私を呼ぶ声が聞こえた。
(…この声は、良く朝会の時に聞く)
「見て分からないんですか?野村会長」
野村会長と呼ばれた男は、クスッと笑う。
「あれー?紫乃さん、俺、前に透って言ったのにー」
笑顔を崩さずサラッと紫乃を貶める言葉を言う。
「あー、そうでしたね。私忘れっぽいんで」
野村会長は紫乃の耳に口を近づけると、他の人には聞こえない様に話す。
「いい加減にしてくれないかなぁ」
「なっ何を」
若干声色が変わった事に紫乃は焦りを感じる。
(やっやばい)
「ふぅー」
耳に息を吹きかけてくる。
びっくりして体がビクッとする。
慌てて体を離すと勢いに任せて叫んでしまった。
「もー、生徒会でも雑用でもなんでもするし、言う事何でも聞くからやめて‼」
普段話さない紫乃の声を聞いて教室中が静まり返り、視線が紫乃に集まる。
かぁぁ
紫乃は自分が赤くなってくのを感じる。
「ふぅーん?何でもって言った?」
同時に、最悪な事態に気づき、青ざめてく。
「あっあっ」
「じゃあ、これからはちゃーんと、と・お・るって言ってね?し・の」
紫乃は下を向いていたが、勝ち誇った笑顔の透が頭に浮かんでいた。