「…心花ちゃん」



私を料理部に入れてくれ、たくさんアドバイスをしてくれたり一緒に作ったり、忍先輩には誰よりもお世話になった。

だけどそれが全部私の不純な動機だって知られたら、忍先輩だってきっと怒っちゃう…!




「今年の学祭、うちの部は頑張っちゃうわよ」



「え………?」



思いもよらない忍先輩の言葉に、私はぽかんとした顔になった。


学祭って、二学期最初の学校行事であるアレの事だよね。


各クラスや文化部で出し物をする、学校全体で行うお祭りみたいな奴だ。

去年は料理部ではケーキカフェをやったんだっけ。




「今年の料理部は、想いを伝えるキューピットになっちゃうの。
心花ちゃんの恋も、もちろん応援しちゃうわ。私の魔法は強力なのよ?」



「忍先輩、それって…?」



パチンとウインクをして見せた忍先輩の言葉には、不思議な現実感があった。


こんなに距離のある私の恋も、忍先輩にプッシュされたらどうにかなりそうでドキドキ… ドクドク…





「…て、言うか心花ちゃん!
出血がドクドクヤバいわ!早く世良先生に見てもらいなさい!!」



「わぁっ!
はいぃぃーっ!!」



覆った布巾のキャパを超えそうな出血に、私は急いで廊下を飛び出した。

まずは、早く止血してもらわなきゃあ!