「…ごめんなさい、忍先輩。実は私、本当は小沢先輩の為に料理部に入ったんです」



「尚人の、為…?」



このママ高で入る部活を考えている時、私に声をかけてくれたのが小沢先輩だった。


あんな風に誘われて、ビックリしたけど嬉しかった。


サッカー部のマネージャー、なりたかった。




――『飯は美味くて腹一杯食べれるものを期待してるから』



でもだからこそガッカリされたくなくて、断ってしまったの。



だけどそんな時に食べた忍先輩のマフィンがスゴく美味しくて…。



「小沢先輩に本当に美味しいって思われるものが作りたくて、料理部に入ったんです!
だけどせっかく上手に焼けた私のマフィンは渡せなかったし、新しいマネージャーは部員たちにも人気だし、私なんか…っ」



結局私は、何もやりたい事がなせてない。

気持ちも伝わらない、想いも届かない。


距離も、縮まるどころか――――…