結局

私は小沢先輩の誘いには首を縦に振れず、どよよんと曇った表情のまま他の部活の見学にまわった。



折角あんなかっこいい先輩に声をかけてもらったのに、棒に振るってしまう羽目になるなんてっ。

私ってばサイテーだぁ…。







『あら、あなた、何も食べないで帰るつもり? ダメよ。これ食べてみて』



『え…?』



いつの間にか歩いた先は家庭科室で、そこには料理部の振る舞う手作りスイーツを狙って生徒たちが群がっていた。



(――料理部…!)




圧倒的な人気に、到底私の口には入りそうにない様子だった所を、かわいいカップに入ったマフィンを差し出した人がいたのだ。



『ほら、食べて?』



口調は女だったのに、その声やマフィンを差し出した手は男のもの。

顔を上げて見たその主こそが、この料理部の現部長 一条忍先輩なのだ。