「…………………!」



私の目の前まで近寄ってきた金髪ヤンキーは、何かに気付いたように意識を鼻に集中させた。



「…甘い…匂いだ!
この辺りから…」



クンクンと鼻を鳴らしながら、私のまわりのニオイを嗅ぐ金髪ヤンキー。

え、まさか変態ヤンキー?


うわぁ、新手の変質者だ。
どうしよう!


…などと思っていると、金髪ヤンキーは私の持つバッグを睨んで言い放った。



「ここだ!
ここから甘い匂いが漂ってくる!」



「え…」



彼の言う通り私の持つバッグには、今日部活で作ったマフィンの失敗作が入っている。


その殆どは、生地の中の空気が抜けてなくてボコボコな仕上がりのもの。

だから商品価値はないにしても、味は成功したものと同じなのだ。



食べれないわけじゃないし、誰かもらってくれたらいいなと思ってた。

武藤くんにはあげれなかったから、優ちゃんに食べてもらおうかな。


そう思っていたのだけど。