その後は、菅野先生の優しく丁寧な指導で課題はあっと言う間に片付いた。

数学なんてややこしくて嫌になっちゃうけど、こうやって落ち着いた環境でゆっくり考えればできるもんなんだよねっ。




「さて、後は教室を施錠するだけだ。
梅津さん、忘れ物はないかな?」



「はい、ちゃんとバッグに全部…………あ」



バッグを開いて中を確認していると、武藤くんに渡し損なったマフィンが覗いているのが見えた。


1つは小沢先輩にあげようと思っていた、自信作のマフィン。

もう1つは、商品にもならないようなマフィンのなり損ないである失敗作。



「えーっと…」



ちょっと迷ったけれど、私はその2つのうち、キレイに焼き上がった自信作の方のマフィンを取り出した。



「はい、菅野先生。
よかったらコレ、食べて下さい。
部活で作ったマフィンです」



本当は、片思いしてる先輩を想って作ったものですけどね。

…と、心の中では付け加えておいた。