「兄が少し曲がってるせいか、両親…特に母は僕を良い大学に行かせたいようなんです」



「う うん…」



急になんの話になっちゃったんだろう。

急に真面目な雰囲気に、さっきまでの和やかな空気が私と武藤くんの間でピンと張り詰めた。



「勉強だけが、僕の毎日だった。
学校に行っても、家に帰っても、勉強しかなかった」



「……………………っ」



「塾に通うようになっても、勉強ばかりだと思ってた。
だけど、そうじゃなかった」



他のまばらに散る生徒たちが、順番に菅野先生の採点を受けている。


今は講義中ではないから、多少の私語は別に禁止されていない。


今の私と武藤くんの会話も、違和感なく他の生徒たちの私語にかき消されていた。




「心花先輩。
勉強ばかりの毎日に楽しみを僕に与えてくれてるのは、心花先輩だけだ。
だから僕はもっと、心花先輩と一緒にいたいって思うんです」



「武藤くん…」




それって…それって…