「尚人が来ないって聞いてから、ずっと元気なかったものね」



「いえ…それは…」



そんなに露骨に落ち込んでたのかな、私…。


忍先輩は小沢先輩と友だち同士だから、ここにダベりに来たりはよくある光景で。

その話を私がしたからって、そんな風に思われるとは思わなかったんだけど。




「………好き…」



「えっ」



忍先輩の言葉に、ドキッとして顔を見た。

今、何て――…



「…なんでしょ?
尚人の事」



…あ…小沢先輩の事かぁ。

そうだよね、忍先輩が私の事なんて好きなわけないし。



…って!

ホッとしてる場合じゃない。

ズバリ図星でギクッとしちゃうっ




「別に誰にも言ったりしないわよ。
ただ…」



「?」



私のドキドキ冷や汗にクスッと笑った後、忍先輩はフッと悲しそうな目をした。



「私のマフィンで心花ちゃんは釣れたけど、心花ちゃんの心までは釣れなかったみたいね」



「ぇ…?」



最初は忍先輩の言った意味がわからなかった。


だけどそれに気付いたのは、調理室を施錠し校門の前で忍先輩と別れた後だったの。