「…………………っ」
ほら…また、時折見せていたあの顔だ。
メガネの奥で映っている菅野先生の目が、何を見ているのかわからない。
寂しげなその瞳の向こうには、誰の顔が見えているの…?
「ごめんなさい、菅野先生っ
その指輪、彼女へのものですよね」
「ん…そうなったらいいなって思ってね」
そうなったら?
いいなって…っ
「菅野先生?
先生って、彼女がいるんでしょ?
だから指輪を…」
「渡せる日が来ればいいなと思って、待ってるんだよ。
それが明日になるか1年先になるか、僕にもわからないけどね」
「…………………っ」
待ってる…?
イニシャルが彫ってあるって事は、それが誰なのかは明確なのよね。
K¸U
それが、菅野先生の想い人って事?
“う”が付く名字って、色々ある。
だけど、私だってイニシャルはK¸Uだ。
これは偶然?
それとも…………
「…さぁ、遅くならないうちに帰ろうか」
「はい…菅野先生…」
菅野先生の待ち続けている、想い人さん。
K¸U
それが誰なのか、もう私には気になって気になって、仕方なくなっていた…。
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