「お待たせ、梅津さん。
さぁ、行こうか?」



「!!」



急に戻ってきた菅野先生に、私は飛び上がりそうなほど驚いた。


来ている事に気付かなかったから、思い切り菅野先生の荷物から勝手に指輪を見ている所もバレバレだ。



「ご ごめんなさいっ
勝手に、こんな事…っ」



あたふたと、指輪をもとのように戻そうとするが、焦って手がうまく動かない。



「あ…っ」



箱にしまうつもりが手を滑らせ、事もあろうに1つ下に落としてしまったという。



「すみませんっ
本当に、ごめんなさいっ」



コロコロと転がっていく指輪。

すぐに拾おうとしゃがみこんだのだけど、それよりも早く菅野先生は先に指輪を拾い上げていた。



「あ……っ」



いくら優しい菅野先生でも、大切なペアリングを関係ない人に勝手に触られたりしたんだもの。


怒られる――――!






「―――――――っ」





ギュッと目をつむり、その瞬間を覚悟していたのだけど、菅野先生は何も言って来なかった。



「…………………?」



そっと目を開けて見てみたけれど、怒っているような顔付きでもなく、いつもと同じ表情。



「…菅野先生…?」



その意味もわからなくて、私はただ拾った指輪をジッと見つめる菅野先生を呼んだ。