部屋にある水盆を手当たり次第覗いていくが、どれを見ても凍った下界しか写されなかった。
だがその反面、すべてが凍ったお陰であの城を攻撃していたエルフやドワーフたち、すべての動きが止まり、被害が大きくなっていないのが幸いだ。
もしかして、魔法使いは彼らを止める為、氷の魔法を使ったんじゃないだろうか?───いやいや、それにしてはやり過ぎである。
下界を滅ぼしたと長は言っていたけど、まだ滅んだ訳じゃない。魔法使いに頼んで、氷を溶かしてもらえばいいんだから。
凍らせたのが彼ならば、それを溶かすことができるのもきっと彼のはず。
ならば、早急に魔法使いに頼まなくちゃ。
天界へ戻る間際、これから魔法界に行かなくちゃいけないと彼は言っていた。キングが囚われていると。なら早くキングを助け出して、魔法使いには下界を元通りにしてもらわなくちゃ。
長は、彼が魔法界を滅ぼしたと言っていたけど、自分の故郷だと言っていた場所を滅ぼしたりするだろうか?
とにかく、その魔法界とやらに行ってみれば何か分かるかもしれない。
そうと決まれば、この部屋に用はない。
私は、水盆に写し出された者達をちらりと見たあと、部屋を出た。
いざ、魔法界へ。