「キモいってよ。」

俺はからかうように五島を見たが、本人はそれどころではないらしく、俺の体育着をひっぱって一人の女子を指差した。

「葉山っ!!見ろよ!アイツヤベェ」

「今度は誰だよ…。」

俺は五島のテンションに嫌気がしながらも指の先を見る。

試合は地味チームと活発チーム。

俺の目は自然と一人を探す。

「冬花!冬花桜音!アイツなんなんだ!?」

五島の口から出た名前は俺が探している奴の名前だった。

驚いて五島に気をとられていたその時、一つの影がボールがあったであろう人の群れから飛び出した。

他の女子がそれを追うが、誰一人追い付かない。

むしろ、どんどん引き離されていく。

そして最後には華麗にレイアップシュートを決めていた。

飛び上がった体が地についた時、ソイツが顔をこちらに向けた。

冬花だった。

少し息を切らせて振り向いた彼女は、たった一瞬だったが鳥肌が立った。

心臓が破裂しそうなくらいバクバクと騒いでいる。

俺には彼女が輝かしく見えた。

「…かっこいー!!!」

少し遅れてあの騒がしい声が隣から聞こえる。

それを始めとし、男女ともに騒つきだす。

話の中心の彼女は周りを気にするでもなく、試合に集中していた。