現在の点差は8対10。

二点差で俺たちが負けている。

残り時間もあとわずか。

ラスト十秒のギリギリで俺にボールが回ってくる。

しかしゴールまでの距離は遠い。

走っていく余裕もない。

敵がどんどんこちらへ向かってくる。

俺は目を閉じ、集中する。


大丈夫。



絶対に。




…入れるっ!!


俺はボールをボールを高く押し上げる。

優が高く飛び上がり、ボールを取ろうとする。

優の指先が少しボールをかする。

ボールが揺れて、軌道が少しずれる。

━━ヤバイッ

俺の心臓が少し跳ね上がる。

「入ってっ!!」

上から冬花の悲鳴に似た声が響いてきた。

俺はボールから一瞬目が離れ、冬花を見る。

鉄柵にしがみついて不安そうな顔で俺を見る彼女。

ピ━━ッ。

俺たちの目が合ったとき、タイマーが終了のブザーを大きくならした。

しかし、ボールはまだちゅうに浮いたまま。

ボールがリングを越え、板にぶつかる。

今度はリングの淵にあたり、再びちゅうに浮かび上がる。

もう一度リングにあたると、クルクルとリングの淵を回る。

俺は生きた心地がしない。