少し時間が経つと俺のクラスの女子が帰ってきた。

その中にいた冬花に俺が手を振ると、冬花も俺にピースサインを出した。

俺の座っている列の席まで降りてくると、急に冬花の顔色が変わる。

｢優…。｣

｢久しぶり。桜。｣

あきらかに顔色の悪い冬花に笑う優の目は、最初に見たときと同じような寂しさを感じた。

俺はなんとなく自分だけ違う世界にいるような気がした。

｢二人は仲いいのか？｣

俺の質問に冬花が目を逸らし、暗い顔をする。

そんな冬花のかわりに優が答えた。

｢昔はね。｣

優の答えをかき消してしまいそうな大きな声で大会委員の奴が俺たちを呼ぶ。

｢男子一年、一組と二組降りてこーい。次出番だぞー｣

後ろを振り返ると、俺と優のクラスの男子が移動をはじめていた。

俺は二人の関係が気になりながらも、歩きだす。

｢行ってくるな｣

すれ違いざまに冬花に声をかけたが、冬花はうなずいただけで何も言わなかった。

俺と一緒にコートへ向かっている優が俺に声をかけてきた。

｢秋彦は桜と付き合ってるん？｣

予想も付かない疑問に俺は驚く。

｢んなわけねぇじゃん｣

｢そっか。｣

ニコニコと笑う優の目は、やっぱり寂しそうだった。