「……でもさ、郁美だったらまたすぐに彼氏できるって」


さんざん言葉を選んだつもりでも、結局こういうありきたりな慰め方しかできない自分のボキャブラリーの少なさが恨めしかった。


だが、この言葉通り、郁美が別れると矢継ぎ早に男の子達が郁美を狙って告白してくるのもまた事実だった。


そして、私は可愛い娘って得だよなあと毎度の事ながらつくづく思うのだ。


「うーん、なんか今は新しい彼氏を作る気がしないんだよね……」


ひとしきり泣いて、少し落ち着いた郁美は、一瞬だけ淋しそうに笑ってから、そう言った。


私はそんな彼女の微妙な表情の変化には気付かず、


「えぇ!? あんたが!?」


と、ポカンと間抜けに口を開けて郁美を見た。


「いつもは、別れてもすぐ他の人と付き合ってたけど、なんか……ダメなの。
どんどん修の事ばかり考えちゃうの」


「未練?」


「……なのかなあ。
振られたのって初めてだから悔しいのもあるし、憎たらしいのもあるし、ムカつくし、悲しいし……。

でも会いたいし、声聞きたいし、隣にいたいし……。
なんかいろんな気持ちがぐちゃぐちゃしすぎてどうしたいのかわかんないの」


そう言って、郁美はうなだれた。