「と、ところでさあ、沙織って……土橋くんだっけ? あの人とも仲良かったんだね」


私はおもむろに口を開いた。


男の子の名前を出すなんてめったにないので、声がスムーズに出なかったし、自然を意識しすぎて不自然に声がうわずってしまった。



「あぁ、修?
あたし、一年生のとき同じクラスだったでしょ?

その時によく話すようになったんだよ。どうしてそんなこと聞くの?」


沙織は、そんな私の様子を気にも留めずに答えた。


「ん、今までそんなに仲良く話してるのを見たことなかったからさ」


私はなるべく緊張を表に出さないように話した。


「ああ……、最近相談にのってもらってたから、かな」


沙織はそう言うと、心なしか歩くスピードを少し落としてきた。


ふと彼女の顔を見ると、沙織のキレイに整った眉が微妙に歪んでいた。


「……桃子にもずっと言おうと思ってたんだけどさ、あのグループの中の大山くんって知ってる?
大山倫平」


「知ってるよ」


私はそう言うと、ぼんやり大山倫平の顔を思い出した。


細身で背が高く、髪型とか、持ち物なんかがオシャレな人なのだが、つり上がった小さな目がやけに意地が悪そうに見えて、これまた私の苦手なタイプだった。


トイレでも行ってたのか、先ほどは姿が見えなかったが。