「無理だよ」


私は即答した。


「同じ高校だけど、クラスは全然違うし向こうは私の事なんて知らないし。

そういう頼みなら土橋くんの友達あたりにお願いした方がいいよ」


郁美と土橋修の出会いは合コンだったらしいから、土橋修の友達に連絡をしたほうが早いだろう。


「……あたしもそう思って、何人か修の友達にあたってみたんだけど、みんな教えてくれないんだよね。

“修に口止めされてる”って……。
そこまでするなんてよっぽどあたしに会いたくないんだよね……」


郁美はそう言うと、何かつらい事でも思い出したのか、また大きな瞳を潤ませて唇をキュッと噛み締めた。


そんな様子を見てしまうと、さすがに私も郁美がかわいそうに思えて、土橋修が少し憎たらしくなった。


「そこまでして避けるような男となんでヨリ戻したいの?

あまり性格よくなさそうじゃん。そんな男やめてもっといい人見つけなよ」


土橋修にもムカついたけど、そんな男にいつまでも未練がある郁美にも少しイライラしてしまい、私は少しキツい口調で言い放った。