時間はあっという間に過ぎて、2限目。
みんなは外に向かった。
教室にいるのはあたしだけ。
すると…
「お!いたいた」
「あ…先生、書類ってなんですか?」
一向に書類を持ってこなかった先生がようやく来たのであたしは先生にきく。
「あーあれ、嘘」
「はい?」
「だってお前にこの学校の体育は無理だぞ?」
「ふーん…そっか。だから体操着、はじめっからないんだ」
窓の外を見つめてそうつぶやくあたしに先生はちょっと頭を書いて言った。
「…みんなと体育、やりたかった?」
「……そりゃあ…やりたかったですよ」
「だよな…」
あたしはみんなの楽しそうな顔を見てちょっとだけ悲しくなる。
あたしだってみんなと一緒にあそこで笑いたいのに…
「あたし…今までに体育に参加したの数回しかないんです。」
「…え」
「ほら、あたしこんなんでしょ?だから、小学生の、それも1年生の最初の方の授業しか参加してないんです」
「そ…だったのか」
「高校ではもしかしたら…って思ったけど、やっぱり無理なんですね」
無理だと分かっていてもやっぱり望んでしまう。
「一回でいいから…みんなと体育してみたいなぁ…」
「……」
「卒業までには……それも無理なのかな…」
「夜神…」
「なーんて!!」
「え!?」
少し驚く先生の顔を見てあたしは笑う。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響き廊下からたくさんの声が聞こえてくる。
「先生」
「なんだ?」
「…先生には…どうしても失いたくない大切なものって…ありますか?」
少しの沈黙。
「そりゃあ!!今は生徒だろ!」
ニカッと笑う先生。
「お前は?」
「え?」
「お前にはどうしても失いたくないものって…あるのか?」
「…あります」
もちろんあるよ。
どうしても失いたくない…
何よりも大切なもの…。
「お!!何だ?教えてくれよ!!」
ずいっと言ってくる先生はやっぱり少し子供みたいだ。
「…秘密です!!」
そう言ってあたしは戻ってきた凜子ちゃんたちのもとに行った。
あたしの大切なもの…
どうしても失いたくない、何よりも大切なもの…。
それは…
人との繋がりと…みんなとの記憶
今はまだ、だれも知らないあたしのこの秘密を
誰かに打ち明ける日が来たら、きっと……
だから…
どうかその日まで…
消えないで…。