それを聞いた凛人は、安心した様に柔らかく笑った。



そして、あたしの手を握り返してくれる。




「………うん。じゃあ、寝るな」



凛人はあたしの頭をぽんぽんと叩くと、真っ直ぐにあたしを見た。





「愛してる……千尋…」


その瞳は、優しくて、柔らかい光を宿していた。




「!…うん!あたしも、愛してる」




「おやすみ……ちひ、ろ…」




凛人がそう言って、静かに目を閉じた。



「…おやすみ……凛人」



あたしもそれに応えた。





いつもよりも蒼白い、凛人の整った顔を見つめる。








ーーーあたしの手を握り返してくれていた凛人の手が、やがて力なくあたしの手から離れた。





"ピー"



…………え……?




「…16時35分……。ご臨終です」




いつの間にかあたしの後ろに立っていたお医者さんが、静かにそう言った。





………え…なに、言ってるの?


凛人は1回寝るって、言ってたじゃん。




あたしは椅子から立ち上がって、お医者さんの白衣を掴んで叫んだ。



「凛人はっ、凛人は起きますよね⁈」




お医者さんはそんなあたしに困惑した表情をした。




そしてしばらくの間が空いたあと、静かに首を横に振った。






「…残念ですが……」





…………嘘……だ……



……ねぇ…………嘘、でしょ?





………ねぇ、誰か嘘だと言ってよ!




あたしは凛人の側に戻って、もう1度その手を握る。





……ほら、誰か嘘だと言ってよ……っ







……凛人、まだ、あったかいじゃん……!