「じゃ、また明日な」
そう言った凛人は、傘からするりと出ていく。
「え。凛人ダメ。濡れて風邪引いちゃう」
凛人は、は?と首を傾げた。
「風邪引いちゃダメだから!だから、傘使って?」
必死にお願いするあたしの頭をぽんぽんと叩き、柔らかく微笑んだ。
「だいじょーぶだっつーの。風邪なんか引かねぇよ」
言ったあと、凛人はあたしの頬に軽くキスをして、足早にもと来た道を帰って行った。
……全然大丈夫じゃないよ。
もうすでに濡れてたし。
…あたし、気づいたからね。
凛人の右肩、雨ですごい濡れてたのを。
それに比べてあたしは全く濡れてない。
優しすぎる凛人に、あたしは甘えてばかりなのかも。