キッチン用品の名前も、曖昧です…。
まな板、包丁、フライパンあたりはわかるけど……。
「じゃ、練習会だね」
「え」
「だーいじょーぶ!愛ちゃんにまっかせなさーい」
愛ちゃんは携帯を取り出しなにやら打っている。
「きーまりっ!来週の土曜ね!千尋の家行くから♪」
「えぇっ⁈」
「じゃっ、HR始まるから戻るねー☆」
「ちょっ…」
嘘だぁぁぁぁぁあっ
愛ちゃんのオニーーっ
"ピーンポーン"
「はいはい、今出まーす」
ドアを開けるなり、
「おっじゃまっしまーす♪さー、張り切ってこーっ」
「………」
いよいよ待ちに待った(?)土曜がやってきた。
正直、結構気分重い。
人生初の料理だからね……。
「じゃーん♪これ作ろ!」
「…え、これって」
「そーっ、カップケーキ☆」
愛ちゃんは前学校であたしに見せた雑誌をテーブルに広げ、満面の笑みでそのカップケーキの写真を指差す。
あの、忘れてません?
あたし、料理超初心者なんですけど。
「むずくない?」
「思ってるより簡単だって!」
「そうかなぁ…」
「はーい、練習練習!」
あたしの家なのか愛ちゃんの家なのか。
まるで自分の家で料理するみたいな感じで、あたしをキッチンに引きずる愛ちゃん。
「千尋ー、泡立て器とってくんない?」
「あっ、泡立て器…ですか?」
「そー、泡立て器」
「……えーー…っと」
ごめん、愛ちゃん。
あたしがわかるのは、まな板、包丁、フライパンくらいなんです……。
泡立て器なんて初めて聞く名前だよ……