「千尋ーっ!」

「なに?愛ちゃん」

「ど う し よ う !」

「なにが?」




席が変わってもいつもの様にあたしの前の席の椅子を引っ張って座る愛ちゃん。


愛ちゃんはあたしの机に何冊かの雑誌を広げる。



「もーすぐバレンタインじゃん?海斗にチョコあげたいの!で、買うか作るか悩んでるの〜っ」



乙女だね愛ちゃん。


「今まで彼氏いた事ないから、毎年友チョコだけで買ってたんだけど、海斗いるじゃん?買ったら気持ち伝わんないかなぁって」



うん、そうかもね。



「やっぱり手作りかなぁ〜?」

「うん、その方が伝わると思うけど」




その方が、伝わる…?


「よーっし!作る!って事で千尋も凛人に作るんだよ!」

「えぇっ⁈」

「なーに言っちゃってんのよ!彼氏でしょ?あげないでどーすんのさ」




正直、バレンタインとかすっかり忘れてた。


涼介の事とか、色々あって、ね。




あたしも伝えなきゃって、一瞬思う。


でも…




「あたし、料理下手くそ」

「嘘でしょ、千尋さん」

「嘘言ってどーするの」

「…………」




今まではお母さんがいたから全く料理なんてしなかった。



お母さんが死んじゃってからも、料理はしてない。

いつも、コンビニで買ってくるものとか、レトルトばっかり。




だから、料理なんてした事ありません!