あたしが頭を抱えていると、凛人が厳しい表情をして言った。
「…お前、千尋…。死ぬとこだったぞ」
「え?」
死ぬ?
あたしが?
「俺の中学の同級生のやつらに連れ去られるところだった」
「あ……」
そうだ。
そうだった。
あたし、男子5人組に囲まれて連れて行かれそうになって…
で、口を塞がれたんだ。
だから死ぬところだったんだ。
意識を失ったから、記憶がなかったんだ。
「…千尋の俺の名前呼ぶ声が聞こえて…」
「え?あたし、凛人って呼んでた?」
「あぁ。……お前、覚えてないのか?」
凛人がまさかという目であたしの顔を覗き込む。
「………覚えて、ない」
「マジかよ。…まぁ無理もないか。完全に意識失ってたし」
じゃあ、あたしの呼ぶ声を聞いて、凛人は来てくれたの?
「走ってったら、千尋があいつらに連れて行かれてるところだった」
凛人は曇った表情をした。