「今日、千尋の誕生日でしょっ!そんなのも忘れてんの⁈」
「あ……」
忘れてました、愛ちゃん。
「ハッピーバースデー♪千尋♪」
愛ちゃんが呑気に歌い出す。
愛ちゃん、歌もお上手なんですね♪
完璧女子だなぁ…羨ましい。
「まぁ、そんなたいしたものはプレゼントできないけど…」
なんて言いながら、袋は結構大きめ。
「うぅん、十分だよ!ありがとう」
愛ちゃんからのプレゼント〜♪
嬉しいっ!
「じゃっ、帰ろっか」
愛ちゃんが言うので「うん♪」と笑う。
玄関まで行って靴を履き替えていると、後ろから「おい」と誰かに呼ばれる。
振り返るとそこには……
凛人の姿。
愛ちゃんがあたしの耳元で「頑張れ!」と言い、そそくさと玄関を出て行った。
「あっ、愛ちゃん…っ!」
そんなあたしの声が届くはずもなく。
いや、届いていたとしても振り返ることはない。
後ろで凛人が「話がある」と言った。
本当は逃げ出したい。
だって、別れ話でしょ…?
あぁあたし、フられるのに、離れるのが嫌だと思ってしまう。
寂しいって思ってしまうんだ。
……いいや。
せめて最後くらい、笑って凛人といたい。
あたしは静かに頷いて、久しぶりに2人で玄関を出た。