ねぇ、凛人。

その人は誰?



そのアンティークショップで、あたしが可愛いと言ったあのペンダントを、その人に贈るの?


あたしじゃない、あたしよりもっと好きな人に?



ねぇそうならさ、もっと早く言ってほしかった。




あたしは屋上へ繋がる階段で泣き崩れた。



「凛人……なんでなの…」



もう信じられなくて、ただ泣く事しかあたしにはできなくて。




「…千尋!」



嫌だ。

声なんか聞きたくないよ!


好きでもないあたしの名前なんか呼ばないでよ!



あたしはその場を走り去ろうとする。


「っおい!待てよ!」


凛人があたしの手を掴む。



「…嫌だ……離して………っ!」

「あ?」

「離して……っっ!」




あたしは凛人を突き離した。

「ってぇ」



そのままあたしは走った。




どこに行こうって、目的地があったわけじゃない。


ただ、早く凛人の前からいなくなりたかった。




ねぇ、あたしの事好きじゃないんだから、わざわざ気を遣ってあたしの事探さなくていいよ。



好きでもないのに、あたしに優しくなんてしないで…!