「……瑞希さん?」


不思議そうな鷹雪くんの声に、はっと我に返る。


「どうかしましたか?なんだか、元気無いですけど…」


心配そうに私の顔を覗き込んでくる。


そんな気遣いが、今の私には辛かった。



「えへへ、大丈夫だよー。駄目だね。実は私、鷹雪くんの結果が気になり過ぎて昨日ちゃんと寝られなかったんだ。だから、ただの、寝不足」



私はもう一度、無理やり笑みを浮かべた。


確かに、昨日は寝不足だったんだ。



……君と離れてしまうことが決まってしまうのが、怖かったから。




私、最低な家庭教師なんだよ。


……受かって欲しいって思いたいのに、思えなかったんだよ。



心のどこかで、君が悲しむのを分かっていながら、落ちることを、願ってたんだ…。


「瑞希さん」


「ごめんね、逆に心配かけちゃって。……本当に、合格おめでとう。……私、帰るね」



これ以上、鷹雪君の前にいたら、堪え切れずに涙が出てしまいそうで。


私は、返事も聞かずに立ち上がって、部屋を出た。