やり直す…?
二年前の私たちに戻るという事?
言葉を失う私に、大翔はフォローする様に言ったのだった。
「結婚は忘れてくれていい。ただ、もう一度新しい気持ちで、やり直せたらいいなと思ったんだ」
「うん…。少し考えてもいい?」
「もちろんだよ」
そして大翔は、私の額にキスをした。
「おやすみ、由衣」
「おやすみなさい」
小さく笑顔を返し車を降りると、クラクションを鳴らして帰っていく大翔の車を見送った。
すると、
「おい、由衣」
背後から、聡士に腕を掴まれたのだった。
「そ、聡士!?何で?」
何でこんな所にいるのよ!!
「大声出すなよ。もう遅いんだからさ」
「じゃあ、驚かせる事をしないでよ」
睨む聡士に、こっちも睨み返す。
「お前が帰って来ないからだろ?」
「は?何を言ってるのよ」
「電話、全然出なかったじゃないか」
電話?
そう言われて、バッグから携帯を取り出すと、確かに聡士から三件の着信があった。
「マナーモードにしてたから、気付かなかったわ」
だからって、わざわざ家にまで来る?
「ふぅん。マナーモードねぇ。本当は大翔に夢中で、気付かなかったんだろ?」
「何よそれ…」
やっぱり見られてたか。
それにしても、だからといって、聡士にあれこれ言われる筋合いはない。
「キスされてたじゃん」
「見てたの!?」
「見えたんだよ」
ふて腐れた様に言う聡士を、さらに睨みつける。
「それよりさ、こんな所で話ししてると近所迷惑だから、由衣の部屋に入れてよ」
「な、何を図々しい!」
どこまで、自分勝手なんだろう。
聡士を知れば知るほど、最初の落ち着いた感じのイメージが崩れていく。
まさに、“本性”を見た感じだ。
「図々しい?お前、大翔に会えてだいぶ強気じゃん」
じりじりと近寄る聡士に、思わず後ずさりをする。
「昨日は俺に抱かれたのに、今日は大翔にキスされるんだ?」
その言葉に、顔が赤くなるのを感じた。
「あいつも可哀相だよなぁ。結局、裏切られてるんだもんな」
冷たく言い放つ聡士の頬を叩こうと、振り上げた手は見事に掴まれてしまった。
「続きは、お前の部屋で」