聡士のベッドは、よくきしむ。
私の甘い声が漏れるたびに、その音はより一層大きくなるのだった。
そういえば、一香の香りがしない。
今まで、散々匂ってきたのに、今夜はベッドから全く匂ってこないのだ。
もしかして、聡士が一香の家に行っているのかもしれない。
こんな時でも、頭の片隅には二人の関係がちらつく。
「指輪、外せたんだな」
「え?」
息を荒くし、汗ばんでいる聡士が、私を見下ろしながら言った。
「いつか、つけてたろ?あれは、大翔から貰ったんだよな?」
「気が付いてたの…?」
私も息が絶え絶えになりながら、そう答えた。
「だいたいな。最近はつけてないなと思ってさ」
それはきっと、聡士との関係があるから。
自然と、指輪は外していた。
「なあ、もうつけるなよ。必要ないだろ?」
「そ、それは…」
より一層、ベッドをきしませながら、聡士は意地悪く言う。
「どうなんだよ?」
「どうって…」
何か言おうにも、出てくるのは甘い声ばかり。
聡士に感じている証拠ばかり…。
「こうやって、由衣を抱きながら思うんだ。大翔にも、こんな声を聞かせたのかなとか…」
それは、こっちも同じ。
一香をどれほど愛おしく抱くの?
こんな風に意地悪く抱かないんでしょ?
「忘れさせるから…」
「聡士、何を言っているの?」
すると、今夜一番力強く私を抱くと、何も言わせなかった。
ただ、甘い声だけを漏らして、私は聡士に抱き着いた。
そして、薄れゆく意識の中で、聡士の小さな声を聞いたのだった。
『忘れさせて』
その言葉の意味を考える余裕なく、私は何度も何度も抱かれたのだった。