私が辞めれば徹の足を引っ張ることなんて無くなる。
先生に怒られようが嫌われようが、関係ない。
「…そうか。お前にはガッカリだ。」
先生は怒ったのかそう言い捨てて音楽室から出ていった。
徹の方を見るとさっきと何も変わらないただの無表情。
…ほら、私のコトどうでもいいからそんな顔してんでしょ。
だんだん徹に対しての怒りが積もってきた。
ガラッ…
「あっ…!徹!!」
徹が逃げた。私に何のフォローもなしに!しかもガン無視っ!
あ"――――っ!!もう私の怒りが臨界点に達したっ!
私はスクバをわしづかみして、階段をかけ下り、昇降口へ向かった。
そこには徹の姿が。
「徹―――――っ!」
私の叫びに気付いた徹は、スニーカーを持って、裏の職員玄関に向かって走り出した。
徹め…裏の駐車場から近道するつもりだな?
私もローファーに履き替え、徹を追いかける。
「走りで私に勝てると思うなよ」
全速力で走る私。
最初は楽勝だと思ってた。
…けど、なかなか追い付けない。
あれ…?
徹ってこんなに速かったっけ…
徹ってこんなにたくましい背中だったっけ…
徹ってこんなにカッコよかったっけ…
いつも見ているはずなのに…
なんなんだろ…この切ない気持ち…
心臓が破裂するみたいに痛い…