カランカランッ…


入口で何かが落ちる音がした。

咄嗟に渡川が離れる。
そこにいたのは


「徹っ!!」


驚いて立ち尽くす徹だった。あの音はスティックを落とした音だったらしい。徹の右足元にスティックが落ちている。


「と…」


徹の方に向かおうとした瞬間…


「っと!」


渡川の手に捕まってしまった。


「佐伯ー!残念だったな。シイは俺の女になったんだよ!」

「ちょっ何変なこと言ってんのっ…」

「だからキスしてたって訳☆良かったなー幼なじみだからってシイの子守りしてて、今解放されて。お前モテるし彼女作れば?」


な、何勝手なこと…


「んなわけな…」


「じゃ、俺帰るわ。じゃーなシイ♪」


渡川が音楽室から出て行く。

私と徹の2人っきり…


「徹…あいつの言ってること、でまかせだから」


制服の袖で唇を拭く。


「ファーストキスだったのに…」


ずっと下を向いて黙りこくる徹。


「徹?」


徹の肩を叩こうとしたその時…


すっ…


「え?」


避けられた。


「…隠さなくてもいいじゃん」

「なわけないじゃん!!」

「じゃあなんでキス拒否しなかったんだよ!」

「渡川の力が強かったんだもん!」

「お前突き返すくらいの力あるだろ!………んで隠すんだよ」