僕は他人の完璧でなくてもいい。
僕は僕のトランペットをあればいい。
人が感動をしてくれるような、上手くて、温かい演奏ができればそれでいい。
一年生と那音先輩とのコンクールメンバーで、金賞を勝ち取りたい。
思いは、今もあふれ続けている。
―――那音先輩を越えたい。
そして、コンクールで勝ちたい!
「母さんには、私が説得しよう。」
「父さん・・・。」
「だけれどな、吟」
父さんは優しい顔から一変し、僕に真剣な眼差しを向けた。
「けして挫折だけはしないでくれ。」
父のその言葉に、僕は頷いた。
無言で交わした男同士の約束を、僕は胸にしまった。