部長は、にこりと僕らを見て、「よろしくね。」と言った。
僕は、この人を越えたいと思った。
そして、一緒に演奏をして、なによりもいい演奏を作りたい。
そう思った時だった。
その発表に対して納得のいかない上級生たちがいたのだ。
「先生、納得できません!どうして一年生と那音だけなんですか!?
僕らは昨年もコンクールにでたんですよ!?」
一人がそういうと、それに続くように上級生が頷いている。
部長は、その人たちを蔑む目をしていた。
そんな上級生に対して、先生は坦々と告げた。
「この三人の技術と気持ちが、君達よりも上だったからだ。
上級生だからとか関係がない。
心から楽器が上手くなりたい気持ちとオーディションの先のことをしっかりと見据えていたからだ。」
そう言って、先生は次のパートのオーディションへと向かっていく。
多分、部長もそう思ったのだろう――――。
「「「ありがとうございました!!よろしくお願いします」」」
僕と明と田中さんは、三人揃って挨拶をした。
誰かに音頭を合わせた訳ではない。
心からの感謝とやる気だった。
それをみた部長は、僕らを見て微笑んでいた。