人は一人じゃ生きていけないんだよ”


”手を繋いで支えあっているんだ”




そう言いながら、兄は僕を抱き寄せた。



「俺は、この小さい世界から、手を差し延べてもらった。
でも、世界から俺は呼ばれたんだ。
言葉に騙されるな。完璧なんて、この世には存在しない。




そして、兄は母親と大喧嘩をしてこの家をでていった。


姉は、真っ直ぐにででいった兄を見ていた。


その姿は、まるで罠に引っ掛かった動物を、再び自然にかえすようだった。



大喧嘩をしたときに、兄は母親にはっきりとこう言っていたのを今でも覚えている。