しかし、兄はそんなこと気にしなかった。
「吟は俺みたいになるなよ。」
「勉強できなくったって、俺にはアメフトがある。」
「お前は母さんに縛られることないんだぞ。」
そう言って、にこりと兄はいつも笑顔をくれた。
そして、僕がまだ幼い頃に、兄は一人でアメリカへと旅だった。
いつの間にか父親を説得させて、それ程大きくないスーツケースに荷物を詰めて。
「蒼兄ちゃん、どこかにいくの?」
「あぁ。俺は世界にいくんだよ。」
あの時、兄は僕の頭を優しくなでてくれた。
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