初めてだと思う。そんなことをしたのは。
友達なんていなかったし、友達と思われる人も、みんなお金持ちで、送迎車が来ていて。
どうせ両親は遅くまで帰ってこない。
大丈夫だろう。
二人分の荷物を自転車のカゴに乗せて、僕は山田君に言われた通りに自転車の後ろの荷台に乗った。
「行くぜ。」
「うん。」
自転車が動きだした。
初めはゆらゆらと不安定で、いつ落ちるのかと不安になった。
少し進むと、だんだんと安定していき、徐々にスピードが上がると風をきる音がする。
気持ちがいい。
初めての自転車は、好印象。
僕は、自転車をこいでいる山田君に話し掛けた。
「いいね、自転車。」
「だろ?」
山田君は、上機嫌でそう答える。
風が顔にあたる。
まるで、今の気持ちを落ち着かせてくれるように、冷たい風が僕を包む。