だから、君が苦手だと思った。
君は、僕から見たら本当に眩しかった。
完璧という言葉は君のためにあるんじゃないかと思うくらいに。
「明は何にも気にしなさ過ぎよ。」
そう言いながら田中さんも笑う。
柔らかな雰囲気が、三人の間だけに流れた。
その時間が、酷く僕を困惑させた。
練習が始まると、僕たちは一言もしゃべらなかった。
黙々とひたすらにトランペットを吹きつづけた。
みんな、何を考えて楽器を吹いているのかわからなかった。
だから僕は不安が募るのだ。
上級生たちは、音色を聞いても何を考えているねかわからない。
困惑した、渇いた音。
揺れる音程。
纏まらない息使い。
何をそんなに恐れているのかわからない。